次世代シーケンサーとは
次世代シーケンサーとは塩基配列を解読するための装置であり、Next-Generation Sequencingを略してNGSとも呼ばれます。 従来のシーケンサー(サンガー法、第一世代シーケンサー)と比べて、1回のシーケンスで大量の配列情報が得られることが特徴です。 一口に次世代シーケンサーと言っても、様々なシーケンサーが各社から販売されています。 代表的な企業としてIllumina、Pacific Biosciences(PacBio), Oxford Nanopore Technologies等が挙げられます。 次世代シーケンサーは大まかにIllumina等の第二世代シーケンサー、Pacific Biosciences(PacBio), Oxford Nanopore Technologies等の第三世代シーケンサーに分類できます。 第二世代シーケンサーは読み取れる塩基の配列長(リード長)は数百塩基程度と短いですが、比較的高い精度で大量の配列情報を読めることが特徴です。 第三世代シーケンサーはデータ量および精度の面で第二世代シーケンサーと比べて劣りますが、長いリードを取得できることが特徴です。
リード長 | 第二世代シーケンサー < 第三世代シーケンサー |
データ量 | 第二世代シーケンサー > 第三世代シーケンサー |
精度 | 第二世代シーケンサー > 第三世代シーケンサー |
Illumina
第二世代シーケンサーに分類されるIlluminaシーケンサーは現在最も多くのシェアを獲得しているシーケンサーです。 iSeq, MiniSeq, MiSeq, NextSeq, HiSeq, HiSeq X, NovaSeq等、多くの製品が展開されており、それぞれ出力できるデータ量や適したアプリケーションが異なります。 Illuminaシーケンサーの特徴は、DNA断片を両端からシーケンスすることができることです。両端から読まれたシーケンスデータはペアエンドリードと呼ばれ、リード長は「2 × n bp」のように表現されます。
MiSeq | NextSeq | HiSeq | NovaSeq | |
リード長 | 2 × 300 bp(最大) | 2 × 150 bp(最大) | 2 × 150 bp(最大) | 2 × 150 bp(最大) |
データ量 | 15 Gb | 120 Gb | 1500 Gb | 6000 Gb |
精度 | 99.9 % | 99.9 % | 99.9 % | 99.9 % |
Pacific Biosciences
Pacific Biosiences社のシーケンサーは第三世代シーケンサーに分類されます。 1分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングと呼ばれる技術により、DNA合成の様子を観測することで塩基配列を決定します。 PacBio RS II、Sequel Systemの2種類が普及していますが、Sequel Systemの方がより新しく、PacBio RS IIはすでに販売が終了しています。
PacBio RS II | Sequel System | |
リード長 | 平均20 kb | 平均20 kb |
データ量 | 1 Gb | 10 Gb |
精度 | 86 % | 86 % |
Oxford Nanopore Technologies
Oxford Nanopore Technologiesのシーケンサーは2014年に販売開始された比較的新しいシーケンサーで、第三世代シーケンサーに分類されます。 ナノポア(ナノスケールの穴)の中を核酸が通過する際の電流の変化を計測することで、塩基配列を同定します。 MinION、GridION、PromethION等の製品が展開されており、それぞれ出力できるデータ量が異なります。 MinIONは手のひらサイズのシーケンサーであり、ノートパソコンから電源を供給できるため、実験環境の整っていない場所でもシーケンスが可能です。 試薬の改良等により、リード長・データ量・精度の改善が見込まれます。
MinION | GridION | PromethION | |
---|---|---|---|
リード長 | 最大数百 kb | 最大数百 kb | 最大数百 kb |
データ量 | 10 Gb | 100 Gb | 3 Tb |
精度 | 85 % | 85 % | 85 % |
参考: Products